永世中立国スイス”中立の厳格化” 否決なぜ?
【けさ知っておきたいNEWS】
テレビ朝日グッド!モーニング「けさ知っておきたいNEWS」のコーナーで解説されたNEWS内容をご紹介しています。
この解説のあと「けさ知っておきたいNEWS検定」が出題されます。
永世中立国として知られるスイスで9月27日、中立のあり方を憲法でより厳格に定めるべきかを問う国民投票が行われました。
その結果、反対が7割を超え、厳格化は否決されました。
スイスといえば、マッターホルンをはじめとするアルプス山脈や、美しい中世の街並みが残るベルン旧市街などで知られています。
一方で、国際政治の面では長年「永世中立」という独自の立場を守ってきました。
なぜスイスは永世中立国になったのか
スイスはヨーロッパの中央部に位置し、北にドイツ、西にフランス、南にイタリアなどがあります。
国内にはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語という複数の言語圏が存在します。
永世中立制度に詳しい九州国際大学の磯村英司准教授によると、もし周辺国同士の争いでスイスが特定の国を支持すれば、国内の言語圏の間で分裂を招く恐れがありました。
そのため、中立という立場が国内の安定にも重要だったと考えられています。
また、周辺国にとっても、ヨーロッパの中央にあるスイスが中立であれば、他のどこかの国だけがこの地域で優位に立つことを防げるメリットがありました。
こうした事情から、1815年のウィーン会議でスイスの永世中立が国際的に承認されました。
中立国でも軍隊は持っている
スイスは現在も多国間の武力紛争には参加せず、軍事同盟にも加盟していません。
今なお、NATOにも入っていません。
ただし、「中立国だから軍隊を持たない」というわけではありません。
自国を守るための軍隊を保有しており、兵力だけでなく戦闘機や戦車なども備えています。
つまりスイスの中立とは、武力を持たないという意味ではなく、他国同士の戦争や軍事同盟には加わらず、自国の防衛は自ら行うという考え方です。
きっかけはロシアへの経済制裁
今回の国民投票につながった大きなきっかけが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻でした。
スイス憲法では、中立を維持することが政府の責務とされています。
しかし、他国への経済制裁や軍事同盟との協力をどこまで認めるのかについて、細かく明文化されているわけではありません。
ロシアがウクライナに侵攻すると、EUはロシアに対して経済制裁を実施しました。
スイスもこれに同調し、ロシアへの制裁に加わりました。
すると国内では、「特定の国に制裁を科すことは、本当に中立といえるのか」という疑問が浮上しました。
そこで、中立の内容を憲法でより厳格に定めようという動きが広がり、国民投票に発展したのです。
なぜ7割以上が厳格化に反対したのか
今回の投票では、中立をより厳しく定める案に対し、7割を超える有権者が反対しました。
磯村准教授は、その背景にヨーロッパ諸国との連帯や協調を重視するスイス国民の考えがあると分析しています。
もし中立を厳格に定めれば、ロシアのように国際秩序を大きく揺るがす行動を取った国に対しても、経済制裁に参加できなくなる可能性があります。
その結果、周辺のEU諸国との足並みが合わなくなり、スイスだけが孤立する恐れもあります。
つまり、多くの国民は「中立そのものは守りたい。しかし、状況に応じた柔軟な対応ができる余地は残しておきたい」と考えたとみられます。
きょうのNEWS解説まとめ
スイスは1815年以来、永世中立という立場を守ってきました。
しかし、現在の中立は「何もしない」という意味ではありません。
ウクライナ侵攻を受けたロシアへの経済制裁のように、国際社会と協調する場面もあります。
今回の国民投票で中立の厳格化が否決されたことは、スイスが中立を放棄するという意味ではありません。
むしろ、永世中立を維持しながらも、国際情勢に合わせて柔軟に対応できる現在の仕組みを、多くの国民が選んだ結果といえそうです。
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